『サンドラの週末』 リストラに立ち向かう庶民にエール


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 英国のケン・ローチ監督、ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督らと並んで、“ブレない男たち”ことベルギーのダルデンヌ兄弟。今回も映画の舞台は郊外で、主役は低所得者層の庶民。リストラの憂き目にあったサンドラを通して、資本主義に翻弄されながら生きる庶民の声を拾い上げたような内容だが、今回はところどころに希望をちりばめ、最後は彼らにエールを送るような応援歌を作り上げた。

 リストラされたサンドラだったが、投票で同僚たちから賛同を得られれば、復職を認められるようになった。しかし会社は同僚たちを懐柔する。それは、「1人解雇できた場合には、ボーナスをあげますよ」と金をちらつかせる分かりやすい手法。サンドラは週末を使って同僚たちを訪問し、自分に味方してくれるように説得する。だが、同僚たちも家計が厳しく、喉から手が出るほどお金が欲しい。投票は週明け。果たしてサンドラは過半数の賛同を得られるのか?
 至ってシンプルな構成だが、ひたすらサンドラを追うカメラの効果も相まって、見ているこちらもすっかりサンドラに感情移入し、物語の舞台に放り込まれたかのような気分になる。コレ、ドキュメンタリー出身のダルデンヌ兄弟らしいいつもの手法。そうは分かっていても、物語の世界に引き込まれてしまうんだな。主演は、ハリウッドでも大活躍のマリオン・コティヤール。でもやっぱり彼女、欧州映画のテイストの方が似合ってる。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督・脚本:ジャンピエール&リュック・ダルデンヌ
撮影監督:アラン・マルコアン
出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジォーネ
5月23日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美