新鮮素材で漁師飯 国頭漁協、港食堂が評判


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 【国頭】国頭村漁業協同組合(大嶺嘉昭組合長)が4月10日に辺土名漁港内にオープンした「国頭港食堂」が、口コミで人気を集めている。早朝に定置網漁で捕れた魚が昼には皿に並ぶ新鮮さと、料理店で包丁を握った経験のある漁師がさばく、飽きのこない日替わりメニューが売りだ。

大嶺組合長は「多くの人に食べてもらい、いずれは食堂の規模も拡大したい」と意気込む。
 食堂は観光客向けの定置網漁体験を提供していた同組合が、捕った魚をすぐに提供しようと企画した。漁師ら自らで1年かけて漁港内の加工施設2階に食堂を完成させた。テレビでも取り上げられ、ゴールデンウイークには昼だけで100人近い客が訪れたという。
 客を呼び込む漁協経営を知るため、記者が定置網漁に同行した。9日午前6時半、与那区沖に設置した定置網に到着。魚を誘い込んだ場所で漁師らが一斉に網を引き始めると、ガツンやグルクマ、カツオが跳ねた。
 国頭漁協では居酒屋などに、傷を付けずに活魚で卸すため、海水ごとすくうタモ網を使う。「高く売るための得意分野だ」と大嶺組合長は胸を張る。
 帰港は午前9時。同10時のセリが終われば、網を引いた大嶺仁さん(40)が包丁を握り、加工所で働く女性らも手伝う。朝捕れたばかりのミーバイやグルクン、イカは漬け丼や空揚げ、みそ汁となって売れていった。
 他にも、鮮度落ちが早く店舗に並ばない魚も提供する。そのため、仁さんは「ここに来ないと食べられないものもあるよ」と自慢げだ。
 同漁協の漁場は東村沖までまたがる本島一の広さで、好漁場も多い。同漁協は豊富な資源を売り出すため、ことし3月、居酒屋経営の民間企業と提携し、活魚の販路拡大にも乗り出している。
 大嶺組合長は「周知されていない未利用魚も含めて、活魚や鮮魚をいろんな形で提供したい」と語った。(嘉陽拓也)

捕れたての魚を提供する大嶺仁さん(左から2人目)と大嶺嘉昭組合長(右端)ら=9日、国頭村の辺土名漁港内
定置網に追い込んだ魚をすくい上げる国頭村漁業協同組合の漁師ら=9日、国頭村の与那沖