【島人の目】ミラノ万博の気掛かり


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 約150の国・地域と機関が参加するミラノ国際博覧会が5月1日から始まった。史上最大規模の万博。10月31日の閉会までに2千万人の来訪が見込まれている。

 イタリアは国中が万博で盛り上がっていると言いたいところだが、賛否両論あって国民の興奮度は高くはない。この手の国際的な催し物に対する、例えば日本人の熱狂ぶりに比べたら冷めているとも言える。財政危機で国中が青息吐息の時に、莫大(ばくだい)な資金が投じられることに懐疑的な人も多い。同時に、だからこそ万博は景気付けになって良い、という意見もある。
 僕はどちらかといえば懐疑派だが、実は博覧会の意義よりもずっと気になることがる。ミラノ市、つまり万博会場の警備や安全対策である。
 万博がオープンする直前、ミラノ裁判所の法廷で被告人が隠し持っていた拳銃を突然取り出し、弁護士と裁判官ら3人を射殺するという前代未聞の事件が起きた。監視が厳しいはずの裁判所で暴露されたずさんな警備システム。もしも万博を狙った過激派などのテロが起きた場合、当局はそれを防げるのか、と思ったりもする。
 イタリアは2001年の米同時多発テロ以降、「イスラム国」やアルカイダなどの過激派組織から名指しでテロの脅迫を受け続けている。カトリックの総本山・バチカンを擁し、重要な文化遺産も多いこの国は、宗教のみならず欧州文明も破壊したい、と渇望するイスラム過激派の格好の標的になっているのだ。
 残虐非道な「イスラム国」は、ローマを襲撃してバチカンを破壊する、とさえ公言している。彼らがその前にテロリストをミラノの万博会場に送り込む可能性がないとは言えない。万博会場の警備体制は厳しく、万全だとされている。必ず遺漏がないことを祈りたい。
(仲宗根雅則、TVディレクター)