『新宿スワン』 鬼才・園子温が“職人”に徹した


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 今年、何と5本もの監督作品の公開が予定されている鬼才・園子温。その1発目となる本作は、和久井健が週刊ヤングマガジンに連載したアウトロー漫画の映画化で、明らかに“職人”に徹して撮っている。

 舞台は新宿・歌舞伎町。綾野剛扮するスカウト稼業にスカウトされた純真男の主人公が、「俺がスカウトした女の子には必ず幸せだって言わせます!」と誓い、町の覇権争いなどさまざまな試練に立ち向かっていく。
 漫画を原作に、血なまぐさい男たちの抗争や駆け引きが描かれる本作は、同じく製作にトライストーンが中心的に関わった三池崇史監督の『クローズZERO』シリーズを思い出させる。キャストもかなりかぶっているし、園監督の起用もエンターテインメントの撮れる映画作家という点で三池崇史と通じる。
 故に、『クローズZERO』が三池崇史の代表作とは呼ばれないように、本作も園監督の代表作となることはないだろう。それでも、作家性の強い監督が我を捨てて職人に徹した時に立ち現れる、娯楽性と作家性のせめぎ合いが生むいびつな面白さが、本作にも確かに存在する。何より、役者陣(特に男優たち)が生き生きしているのだ。興行成績にもよるだろうが、恐らくシリーズ化されるはずである。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督:園子温
原作:和久井健
出演:綾野剛、山田孝之、沢尻エリカ、伊勢谷友介
5月30日(土)から全国公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也