『よみがえるドゥナン』 「国境の島」の歴史概観


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『よみがえるドゥナン-写真が語る与那国の歴史』米城惠著 南山舎・1900円+税

 本書では、古代~現代に至るまでのドゥナン=与那国の歴史を、70枚以上の貴重な写真とそれらに添えられたエッセーを通して概観することができる。
 個々のエッセーは、これまで与那国町史編纂(さん)委員会をけん引してこられた米城惠氏による歯切れのよい文章でコンパクトにまとめられている。

時系列に沿って読み進めるもよし、気の向くままにページをめくり目にとまった写真を眺めつつエッセーを読むもよし、いろいろな楽しみ方ができる本である。どんな楽しみ方をするにせよ、読者諸氏は本書を読み進めることで、かつて「国境の島」どころか琉球王国の版図ですらなかったドゥナンの長い歴史に思いをはせることができるにちがいない。
 本書は、南山舎から刊行されている「月刊やいま」に、1999年から2013年にかけて連載された「むかし八重山」の記事を再編集したものである(なお、本書のなかで「昨年」と記されている年は、「2014年」のことではなく、「月刊やいま」初出時における「昨年」のことを指している場合がある。その点、読者諸氏にはご注意願いたい)。さらにその元をたどれば、1997年に与那国町史別巻として刊行された記録写真集「与那国 沈黙の怒涛(どとう) どぅなんの一〇〇年」に行きつく。
 私事になるが、実は当時、与那国に滞在していた私は、米城惠さんに声を掛けていただき、この記録写真集の編集のお手伝いをさせていただいた。20年近くも前のことになるが、収録候補として集まった膨大な数の写真に圧倒されたことは、今でも強い印象として残っている。本書には、これら膨大な写真群の「エッセンス」である記録写真集の中から、さらに選び抜かれた写真が多数収録されている。その意味で本書は、与那国町史編纂委員会のこれまでの活動の、いわば「エッセンスのエッセンス」であるともいえる。
 大判の重厚な写真集や市町村史の類いは、ふだんは書架に収まったままになっているという人も少なくないだろう。与那国の歴史を通観できる本が限られている中で、本書が「やいま文庫」の一冊として、多くの人の目に触れ、気軽に手に取ってもらえる形で刊行されたことを喜びたい。
 (原知章・早稲田大学人間科学学術院准教授)
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 よねしろ・めぐむ 1941年与那国村(現・与那国町祖納)生まれ。琉球新報記者、リクルート〈東京〉コピーライターを経て、現在、与那国町史編纂委員。

よみがえるドゥナン―写真が語る与那国の歴史 (やいま文庫 15)
米城 惠
南山舎
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