『トスカーナ 美味の教え』古澤千恵著


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自然の恵みを飾らずに
 長靴で言うと「すね」あたり。海もあれば山もある、つまり海の幸も山の幸もふんだんで、温暖な気候のイタリア・トスカーナ州。その地で10年以上暮らす日本人女性がいる。古澤千恵さんだ。

 2000年にソムリエで料理人のご主人とイタリアへ渡り、トスカーナの田舎で暮らす。10年には、鎌倉にイタリアンワイン、イタリア料理、イタリア食材、イタリアアンティークをそろえるショップ「OLTREVINO」をオープンした。現在は日本とイタリアの自宅を行き来しているという彼女。本書は、トスカーナで愛される料理の数々と、食にまつわるエッセーをまとめている。
 レシピは旬の野菜や肉魚、チーズやオリーブオイルなどを使った素朴な料理が並ぶ。作り方はどれもシンプルで、なのにとっても美味しそう。それはきっと旬、つまりその野菜が一番おいしい時にふんだんに使って食べるという、自然の移り変わりに則しているのも大きいんじゃないか。真冬のスーパーにキュウリが並んでいる日本とは大違いだ。
 そのほかにも日本との違いはかなりあるようで、エッセーではトスカーナの台所にまつわるエピソードが並んでいる。100年前の器が食器棚にあったり、市場でちょっとしたオマケがついたりは日常茶飯事。冷蔵庫には鍋のまま保存するし、お菓子を作るときははかりを使わず、スープ用のスプーンで砂糖も粉も量っちゃう(どんぶり勘定!)。日本の「甘いものは別腹」のさらに上を行く「甘いものは消化を助けてくれる」という謎の理屈(本当か?)で勧められまくるドルチェ、そしていろんな野菜を少しずつ、ではなく、今しか食べられない旬の野菜をどっさりと。
 華美な演出は一切ないけど、素朴であったかい。トスカーナの美味の教えは、等身大で無理がなく、だからなんだかほっとする。
 (筑摩書房 1800円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

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