『食べない、死なない、争わない』 垣根のない「真理」説く


社会
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『食べない、死なない、争わない』稲葉耶季著 マキノ出版・1300円+税

 本書は著者の生活体験に基づいて、真理は一つで宗教・宗派、自然科学の垣根はないことを説いた本である。「人はパンだけで生きるのではない、人は主の口から出るすべてのもので生きる」ことは、旧約申命記8-3で説かれている。

 人の魂は永遠の生命を宿し、不生不滅で無限に成長することは、般若心経で色即是空、空即是色として説かれている。これらの宗教上の真理は、自然科学で解き明かされた真理であることを具体的に分かりやすい言葉で書いたユニークな本である。
 第1章は、「食べないから健康である」ことについて説く。著者の5カ月間の食を取らない不食体験に基づいて、万物を生かす太陽の光・熱、天から降る雨、地球を包む空気などから、生きるエネルギーを合理的に吸収する瞑想(めいそう)、体質の改造、食事の取り方について宗教と自然科学両面から説明している。
 第2章は、「死なないから幸福である」ことについて説いている。人の魂は永遠の命を宿し、無限に成長する可能性を秘めていることに気づくと、生きることは楽しく、死はこの世の卒業で、あの世への入学であるとしている。
 第3章は、「争わないから平和である」ことを強調している。「攻撃に備えて武装する」「やられたらやり返す」との考えは幼児並みの考えである。武器を持たないことこそが本当の強さであることをガンディーの「非武装・非暴力」の運動を引用して説いている。宇宙はすべてを育む神の「Compassion」(本質)で統御され、地球は自転・公転して、永続して万物を育み、共存させている。
 ブッダが説いた「慈悲」はコンパッションの縦軸で、キリストが説いた「愛」は横軸である。万物は自然の営みで生かされ、それは神・仏の恩寵(おんちょう)であることは、自然科学で明かされた真理である。(垣花豊順・琉球大学名誉教授)
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 いなば・やすえ 1942年、東京生まれ。東京大学卒業後、東京都庁に就職。77年、司法研修所を経て静岡地方裁判所判事補となり、以後、名古屋、群馬などに勤務。93年、那覇地方裁判所判事。99年、琉球大法文学部教授。那覇簡易裁判所判事などを経て退官後は臨済宗の僧侶となる。弁護士。