【アルゼンチン】10代の情熱 45年ぶり再燃 おじいちゃんボーイズ


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 「ニュー・ジャパーン・ボーイズ」は、アルゼンチンの日系社会にとどまらず、深夜番組「La Campana de Cristal(ガラスの鐘)」にも紹介されたアルゼンチン生まれの沖縄系少年バンドだった。

当時バンドに参加するのは閉鎖的な日系社会では好意的な印象を受けなかった。メンバーもそれぞれ学業があり、活動は1960年代のほんの半年間だったが、彗星(すいせい)のように現れ、消えていった。それが近ごろ再起動し「おじいちゃんボーイズ」として活躍している。
 当時の「ニュー・ジャパーン・ボーイズ」は少年4人組。メンバーの呉屋則和さん(ギター、ボーカル、当時18歳、現64歳、中城出身)と仲里弘輝さん(ギター、三線、当時17歳、現63歳、糸満出身)、玉那覇善一さん(ドラマー、当時15歳、現61歳、西原出身)、玉那覇ミゲルさん(ベースギター、ボーカル、当時15歳、現61歳、西原出身)らが2年前に再結成した。当時は若過ぎて参加できなかった中城出身の新垣エンリケさん(ドラマー、現在60歳)を加え、5人組バンドとして再び活動を始めた。
 演奏はほとんどがカバー曲だったが、オリジナルのスペイン語歌詞「サヨナラ・ゲイシャ」というヒット曲は当時の若者だった世代にも、今の若者にもフィットする。ビートルズやカントリー・ロックが持ち味の米バンドのクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)に加え、沖縄民謡を現代化したバージョンやウチナーポップ、Jポップも演奏した。そのエネルギーはおじいちゃんという枠を超えている。日系社会だけではなく、時には一般の文化音楽行事にもゲスト出演している。
 「おじいちゃんボーイズ」はアルゼンチン生まれの“和製ビートルズ”で誰でも受け入れやすい。エルビス・プレスリーのロックンロールもあれば、北米黒人の踊りやすいソウルもある。オリジナル曲「サヨナラ・ゲイシャ」で誰でも自然に体が動かされる。
 リーダー格の玉那覇善一さんは「当時続けられなかったのは、『ロックバンドに熱中する者は怠け者、甘ったれなやつら』や『人の手本になる生き方をしてもらいたい』という親など周囲からの圧力があり、乗り越えられなかった」と当時を振り返る。
 解散後、メンバーはそれぞれ生活に没頭していた。高齢者と呼ばれる世代になり、家族に対する責任も少なくなり余裕も出てきた。そこへふとした集まりが発端となり、45年ぶりに再び青春の情熱を燃やし始めた。
 玉那覇善一さんは「これもまた運命ですね」と感慨深く話した。「余生だからこそ、少しでも親日国であるアルゼンチンに、音楽を通じて自分たちのルーツである沖縄系日本人としての喜びと感謝を表したい」と強調した。
 「おじいちゃんボーイズ」のオリジナルアルバムがリリースされれば記者としてよりもまずはファン1号としてCDを求めたい。(大城リカルド通信員)

45年ぶりに再結集した「おじいちゃんボーイズ」
アルゼンチン社会で広く人気を博した沖縄系少年バンド「ニュー・ジャパーン・ボーイズ」