『沖縄うりずんの雨』 基地問題を歴史的に検証


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 基地問題で揺れる沖縄、最近でも『圧殺の海-沖縄・辺野古』が公開された。数々の賞を受賞したドキュメンタリー『標的の村』の三上智恵監督も、再び『戦場ぬ止み』で基地反対を掲げる人たちを通して沖縄の歴史や思いを伝えている。そうした作品に触れる度に、本土で暮らしていては分からない温度差を感じて、無知な自分を猛省させられる。

 本作は、日米に拠点を置いて活動しているジャン・ユンカーマンが監督。戦後60年の節目の年には『映画 日本国憲法』を発表したが、今回は基地問題を沖縄戦にさかのぼって検証していくまたも野心作。なぜ基地が設置され、それがどれだけ今も人々の心の傷痕となっているか。日本人だけでなく、元米兵にもインタビューをし、広く戦争に横たわる問題をも考えさせてくれる。
 映画は4部構成。第1部の沖縄戦では米軍撮影の資料映像も盛り込まれ、本物の戦争の迫力、恐怖、無情さが脳裏に刻み込まれる。そして第3部では、米兵による女性暴行問題に迫る。加害者だった元米兵が登場し、基地内で被害を受けた女性兵士の集会にもカメラは入る。
 本作に描かれているどれもこれもが、日頃のニュースでは掘り下げられない問題であり、あらためてドキュメンタリー映画の力と、本作に挑んだ監督やスタッフたちの気概を見るかのようだ。6月23日は沖縄慰霊の日。まさに今、見るべき秀作だ。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:ジャン・ユンカーマン
企画・製作:山上徹二郎
出演:安里英子、池田恵理子
6月20日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美