島尻安伊子参院議員がことし3月に開かれた自民党政策審議会で、民放の番組やCMを蓄積する「放送アーカイブ」構想を議論した際に「先日の選挙では私の地元のメディアは偏っていた。あの時どうだったか調査するのは大事だ」と発言し、同制度を政治家が報道監視に利用する意向を示したとする本紙報道について、島尻氏は29日、島尻氏を28日に取材した本紙記者に島尻氏の同意を得て録音したインタビュー音源の提出を求めた。
国会議員が記者に音源提出を求めるのは異例。本紙は取材で用いる音源やノートは第三者の要求に応じて提供しないと説明し、提出しなかった。
音源の提出を要求した理由について島尻氏は、記事や見出しにある「報道監視」という表現は自身の言葉ではないとした上で、「私がどのような発言をしたか確認する意味で議事録(音源)を見せてほしいとお願いした」とした。
本紙は国会で議論されている放送アーカイブの導入は、制度の骨子案を「文化的資産として放送番組を蓄積し利用する」と定めている中で、同制度の在り方を議論する場で与党国会議員の島尻氏が「メディアの偏向」を挙げ「調査するのは大事だ」と述べたことから、「報道監視に利用する意向」との表現を用いて発言を報じた。一方、島尻氏は「取材で『報道監視に利用』や『報道規制』などは一言も発言していない。大変遺憾だ」とした。
本紙は28日の取材で3月の発言の真意を本人に確認し「調べることが悪用につながるわけじゃない」などと、報道監視の意図はないと主張する島尻氏の見解も29日付紙面で伝えた。
一方、音源の提出要求は報道圧力に当たらないかとの質問に島尻氏は29日、「事実誤認だ。発言について正確な確認をするためだ。取材で述べたことを正確に記事に反映してほしい。それだけだ」とした。自民党県連も「圧力をかける意図は全くない」と説明した。