【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】英紙フィナンシャル・タイムズは6月29日付電子版で、日本のメディアが慰霊の日の追悼式で、安倍晋三首相に対するやじを報じなかったと伝えた。
背景について、安倍政権がメディア管理に成功し、骨抜きにしたとする中野晃一上智大教授(政治学)ら識者の見方を紹介した。
フィナンシャル・タイムズは、首相が式典で「戦争屋」「帰れ」といったやじを浴びたことについて「礼儀正しい日本では非常に珍しい」と指摘した。その上で「NHKと最大発行部数の読売新聞を含む多くのメディアが無視を決めたのは安倍首相がいかに日本メディアを取り込んだかを示している」と首相の批判者らの見方を紹介した。
安倍政権が報道の自由を脅かしているとあおる動きに対しては、「安倍首相は自身に近い支援者をNHKの経営委員に任命し、リベラル派の朝日新聞の従軍慰安婦に関する報道記事を狙い撃ちした」と指摘した。
一方、自民党国会議員の勉強会での報道圧力発言問題後、日本国内で報道の自由に対する懸念が高まっているとも指摘した。安倍政権が過去2年半におよび安定してきた要因の一つがメディア管理としつつも「亀裂が首相の支持率低下として現れている」との中野教授の指摘を紹介した。
記事は東京発。電子版には安倍首相の追悼式でのあいさつと、NHKニュースの動画も掲載されている。