『池宮正治著作選集 全3巻』 琉球・沖縄文化研究の集大成


社会
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『池宮正治著作選集 全3巻』池宮正治著 笠間書院・3巻各1万2960円

 「おもろさうし」研究を中心に、琉球・沖縄の文化について幅広い研究を展開してきた著者の膨大な論考が「池宮正治著作選集全3巻」として刊行された。1「琉球文学総論」、2「琉球芸能総論」、3「琉球史文化論」の3冊である。

 1は「おもろさうし」に関する論考を中心に、琉球文学の位置付けや研究課題についての論文19本で496ページ、2は「組踊」を中心に古典舞踊、三線音楽、民俗芸能、近代演劇など芸能関係の25本で544ページ、3は「歴史叙述、説話伝承」や「歴史文化論」、「和文学論」など文化史関係が21本の496ページである。
 全65本、1536ページに及んでいる。著者の50余年に及ぶ研究の集大成と位置付けられよう。量もさることながら研究対象の幅広さと質の高さには脱帽であるが、これでも著者の全業績からすると3割程度かというから驚きである。
 「おもろ」研究は言うまでもないが、組踊の玉城朝薫や田里朝直らの人物論からエイサ-論、近代の沖縄演劇、王府の正史研究、首里城関連の諸論考、服飾史などなど、著者の旺盛な知的好奇心は止まることを知らないのである。
 ところで著者の速筆はつとに有名である。締め切り前の原稿提出は当たり前で、多くが構成をどうしようなどと悩んでいる最中に、さっさと済ませて涼しい顔をしている。たくさんの引き出しに多くの資料をため込んで、常にああだこうだと論究し、推敲(すいこう)しているからこその速筆なのだろう。
 それでいて多くの論文は実に刺激的である。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いや歯切れの良さは天下一品であるが、候文、漢文を問わず歴史史料を自在に使いこなしての実証的な論証と論述の明快さが論文の客観性を高めている。
 本書は、著者が多岐にわたるテーマを通して王国文化を自在に論じた書である。今後、何かにつけ伊波普猷や真境名安興ら先達の書と同様に、さて池宮先生は何と書いているのか、どう論じているのかと、開いてみる書となることは間違いないだろう。
(田名真之・沖縄国際大学教授)
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 いけみや・まさはる 1940年生まれ、那覇市出身。琉球大学名誉教授、琉球文学研究者。67年、早稲田大学院修士課程(文学研究科・日本文学)修了。2006年まで琉球大学法文学部教授。退官後、国立劇場おきなわの常務理事、専務理事を歴任した。1980年沖縄文化協会賞、96年伊波普猷賞、2014年東恩納寛惇賞受賞。

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