『インサイド・ヘッド』 喜怒哀楽をキャラクター化


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 映画『トイ・ストーリー』シリーズなどでお馴染みの、ピクサー長編アニメーション20周年記念作。しっかし、原恵一監督『カラフル』並みの、深く難しいテーマに挑んできましたよ。

 主人公は、親の都合で田舎町から都会に引っ越すことになった少女ライリーの5つの感情たち。具現化された「ヨロコビ」「ムカムカ」「イカリ」「ビビリ」「カナシミ」というキャラクターたちが、ライリーが置かれた状況によって主導権争いみたいなことをするんですな。
 しかし、引っ越しを契機に「カナシミ」がコントロール不能に。均衡が保たれていた脳内で、大騒動が始まるのだ。本作を見たとき、ちょうど自分がストレスいっぱいでイライラが募り、ワケが分からず涙が勝手に流れてくるような状態だった。なので、まんま自分の脳内を見せられているかのようで、あー、だから私はいま、感情がコントロールできなくなっているんだと納得。
 そして、いまだ解明できない鬱や認知症も、きっとこんな感じなのだろうと、アニメを楽しむどころか、医療番組でも見ているかのような気分で見入ってしまった。
 同時に、海外ではアニメ=子供の楽しむモノという認識だったのが、日本と同じように年齢を問わない内容になってきたことを実感。一方でもはや夢や希望を描いている時代ではないことも、改めて突きつけられた思い。この傾向が良いのか、どうかは分からないが。でもピクサーの新たな挑戦を支持したい。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督・脚本:ピート・ドクター
共同監督:ロニー・デル・カルメン
声:エイミー・ポーラー、フィリス・スミス、ルイス・ブラッグ
7月18日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き
(共同通信)

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中山治美