クルーズ寄港前年比53%増、最多へ 県内15年見込み


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 県内へのクルーズ船の寄港が増加している。沖縄総合事務局がこのほど発表した2015年(1~12月)の寄港予定回数は前年比52・5%増の247回で過去最多となる見込みだ。宮古島市・平良港へのクルーズ船の定期就航などが全体を押し上げている。一方で、大型船が着岸できるバースが限られているほか、外国人客受け入れ態勢の充実など課題も山積している。

 県が発表した14年の海路外国人観光客数は前年比37・7%増の23万8700人で、11年から4年間で倍増した。沖縄総合事務局によると、ことし1~6月の県内へのクルーズ船の寄港回数は前年同期比約10%増の88回に上る。
 28日には那覇港に初めて3隻の外航クルーズ船が同時寄港し、8月1日にはアジア最大級のクルーズ船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」(16万トン級、定員約4千人)も初寄港する予定だ。増加要因について沖縄総合事務局開発建設部港湾計画課の花田祥一課長は「アジアのクルーズ市場が盛んになる中、円安も追い風となり、整備が進む那覇港が寄港地として注目されている」と分析する。
 クルーズ船の規模や寄港数が増大する中、大型旅客船にも対応可能な新たな専用バースの整備が喫緊の課題となっている。旅客船専用の那覇港泊ふ頭若狭バースは最大13万トン級までの船舶しか利用できないため、14万トン級以上のクルーズ船が寄港する場合は、同新港ふ頭の公共国際コンテナターミナルを利用しなければならない。那覇港管理組合企画建設部の松島良成室長は「貨物優先でバースに空きがなく、断った大型船の予約もあった」と話す。
 これまで那覇港と石垣港に集中してきたクルーズ船の寄港だが、県内の他の港湾でも誘致が活発化している。平良港の下崎ふ頭地区では7~10月にかけて「スーパースター・リブラ」(4万トン級、定員約1400人)が中国のアモイから定期就航する予定だ。さらに沖縄市とうるま市、北中城村などは、中城湾港へのクルーズ船誘致に向けてことし3月「中城湾港の振興を考える会」を発足、15年度中の協議会設置を目指し、誘致活動を本格化させる。
 しかし、宮古島の平良港では、県内税関・出入国管理・検疫(CIQ)体制が不十分なことから、クルーズ船が寄港する際に、審査人員の派遣に頼らなければならないのが現状だ。クルーズ船の誘致拡大に向け、ハード面にとどまらず、CIQの増員などソフト面の充実も求められる。(呉俐君)

中国・上海から県内へ寄港したクルーズ船「海娜(HENNA)」=那覇港新港ふ頭、2014年5月2日