『奪還者』 近未来の無法アクション


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 素晴らしい出来栄えの『マッドマックス』最新作が公開中だが、これも同種の世紀末アクション。世界経済の崩壊によって無法地帯と化した近未来が舞台のオーストラリア映画だ。大切な自動車を逃走中の強盗団に奪われた孤独な男が、負傷して置き去りにされた強盗団のボスの弟と一緒に強盗団を追う中で、友情にも似た奇妙な関係を築いていくというもの。だから、笑いの要素こそ少ないものの、バディムービーやロードムービーの面白さも併せ持っている。

 けれども本作の見どころは、やはりアクション。デビュー作『アニマル・キングダム』で「タランティーノが絶賛!」のお墨付きをもらったデヴィッド・ミショッド監督の第2作で、今回も唐突で容赦のない暴力描写はタランティーノにも引けを取らない。情報を小出しにして緊張感を持続させる話術やハエを使った演出、砂漠の描写なども確かな才能を感じさせる。
 敢えてタランティーノとの作家性の違いを指摘するとしたら、それは“悲痛さ”だろう。タランティーノのバイオレンスが純粋な美学に裏打ちされているのに対し、本作の場合はむしろ暴力を否定するための暴力に思えるから。よこしまな分、良くも悪くも湿っていて弾けないのだ。タランティーノの絶賛は、ライバルとはみなしていない余裕の表れと言えるかも。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督・脚本:デヴィッド・ミショッド
出演:ガイ・ピアース、ロバート・パティンソン
7月25日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也