ネット家電、安全確保へ サイバー対策 県が新事業


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 家電や自動車などの生活機器をインターネットにつなぐ「モノのインターネット(IoT)」化が急速に進む中、パソコンだけではなく、身の回りの生活機器もサイバー攻撃の対象となっている。

しかし、生活機器に対するセキュリティー対策はあまり進んでいないのが実情だ。そんな中で、県は本年度からIoT分野の産業化と製品の安全性を確保するためのソフトウエアづくりに向け「生活機器セキュリティ基盤形成促進事業」を始めた。
 県内外の情報産業分野の企業や家電メーカーらが加入する一般社団法人「重要生活機器連携セキュリティ協議会」(CCDS)が主体となり、生活機器のサイバー攻撃への脆弱(ぜいじゃく)性や不正アクセスの手口などを検証するためのソフトウエアを開発し、企業に対し、サイバー攻撃対策のための情報を提供する。将来的には国とも連携しながら、安全性の高い製品にお墨付きを与える国際規格づくりと認証機関の設置を目指す。事業は2015年度から17年度までの3年間で事業費は約3億5千万円(うち国費は約2億8千万円)。
 もし、生活機器がサイバー攻撃された場合、自動車の場合だと搭載された盗難防止装置「イモビライザー」が解除され、盗まれたり、走行中に運転手の意思に関係なく急ブレーキをかけられたりするなどの被害に遭うことが想定される。また、スマートフォンと自宅の家電が連動している場合、携帯や家電が乗っ取られ、第三者が勝手に操作する可能性もある。
 IoT分野でセキュリティー対策が急務となっているが、CCDS代表理事で京都大特認教授の荻野司氏によると、セキュリティーの標準規格は世界的に未整備という。
 仮に、開発したソフトウエアや規格が国内外で認められれば、メーカーや研究機関などからライセンス料が入るほか、情報産業の高度化、多様化につながる。荻野教授は「沖縄に認証機関ができれば、アジアの企業も日本の規格を採用する。結果的に日本の産業競争力を高めることになる」と話した。CCDSは県内企業の参加を呼び掛けるとともに、人材も育成する考え。

<用語>IoT
 「インターネット・オブ・シングス」。日本語訳はモノのインターネット。自動車や家電など、あらゆる物をインターネットに接続して新たなサービスを生み出す考え方や技術。ネットに接続できる製品そのものを指すことも多く、スマートフォンで操作可能なエアコンや冷蔵庫、病院から遠隔監視できるペースメーカー、自動運転機能を持った車などが代表例。利便性が向上する一方、個人情報や営業情報が流出する恐れが指摘されている。

県内の情報産業分野企業の担当者に生活機器セキュリティ基盤形成促進事業の概要を説明するCCDSの荻野司代表理事(左)=22日、県庁
生活機器セキュリティ基盤形成促進事業イメージ図