『筑波海軍航空隊』 元特攻隊員の重い発言


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 戦後70年を迎え、戦争体験者の言葉を次代へどのように伝えていくか?が切迫した問題となっている今、貴重な元特攻隊員のインタビューを決行したドキュメンタリーだ。映画を利用した町の活性化などを目的に活動している茨城県笠間市の非営利団体「プロジェクト茨城」が、同市にあった「筑波海軍航空隊」の関係者を追った。

 証言しているのは当然ながら、生き残った方々。これは、同様のインタビューで共通していることだが、当時20代だった彼らにとってはそれが青春のすべて。仲間との思い出話には目を輝かせ、声も弾む。特攻隊は当時の花形。皆の憧れでもあったため、誇らしげにすら感じる。
 だからこそ、なお一層、悔しさがにじむのであろう。上層部から戦況など知らされずに戦っていた無知だった自分に。そして、ほとんど任務を遂行することなく、沖縄の海で散った仲間の死に。母親に宛てた自分の遺書や「戦争ってのは、人殺しだからね」と言い放つ言葉など、体験者が発するものはどれも重い。
 カメラの前で証言するのは勇気が必要だったと思う。それを後押ししたのは、よくも悪くも時が経過したからなのだろう。戦後50年を記念して製作された映画『君を忘れない』公開時には、特攻隊員にもあった青春や、出撃したくないという本音を描いたところ、戦争体験者から「そんな弱音を吐くやつはいなかった」と批判を受けたというエピソードを聞いたことがある。このドキュメンタリーが今、生まれたのは、真実をようやく受け入れられる時代になったということなのかもしれない。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督:若月治
企画・製作:プロジェクト茨城
ナレーション:原日出子
8月1日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美