『蛭子能収のゆるゆる人生相談』蛭子能収著


社会
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ほんわか腹黒おじさんの明るい諦念
 えー、よりによって蛭子さんかよ。もし人生相談に乗ってもらうとして、クジ引きで相談相手が決まるとして、引いたのが蛭子さんだったら正直ハズレ引いちまったな、って思う。私。おそらく。
 だから逆にどんな回答するのか興味あるっちゃあるわけで、思わず購入。なんか、表紙もいいしね。

 雑誌『女性自身』に連載された「蛭子能収のゆるゆる人生相談」と1993年刊行の書籍『なんとかなるかも』(太田出版)に一部加筆修正を加えたのが本書。仕事とお金、愛と性、家族、生と死など、人生相談つったら大体こんな感じの、オーソドックスっちゃあオーソドックスなテーマが並ぶ。
 だが、そこは蛭子さん。冒頭から「人生相談? はっきり言ってめんどくさい」「他人の悩みなんてホントはどうでもいいんですよ」と低めのモチベーションでバッサリ斬られてます。読み手も「でしょうね」としか言えません。
 それでも意外とちゃんと相談に乗ってるんですよ。っていうか超まとも。中2の娘が勉強もせず「漫画家になる」と言っている。このままではろくな大人にならない気がして……。と悩む女性に対して「子供が夢を持つことの何が悪いの? あなたこそ、ろくな大人じゃないですよ」と真正面からのアドバイス。いや意外すぎる。かと思いきや「太川陽介さんはすごく子どもっぽくて困る」とか「今日は競艇で負けたのでいい答えが出ない」とか、パブリックイメージを裏切らないポンコツ発言もあるんですが。
 割り切り、開き直り、受け入れる。蛭子さんの価値観は一貫してブレることない。誰にも期待せず、過度に美化せず、多くを諦めた上で人生を楽しもうという、その姿勢がすがすがしいのだ。
 それを象徴するような回答がこちら。結婚相手に先妻との間の子がおり、今後ちゃんと愛せるか不安と嘆く女性に、血のつながりなどそんなに気にしなくていいと蛭子さん。「遺伝子なんて、最近見つかったモノですからね」と。……どうですかこの達観。私これまで、そこそこの数の人生相談本を読んできましたが、これはかなりの男前回答ではないでしょうか。蛭子さん、格好いいかもしれない。2度の結婚を「性欲結婚」と言い切るところも(誰がうまいこと言えと)なんか全部、格好いいような気がしてきました。夏バテでしょうか?(東京都・32歳・会社員)
 (光文社 630円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

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