『恋をしていた。』詩・北川悦吏子、写真・あさぎ空豆


社会
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ノートの隅の短い日記
 脚本家・北川悦吏子さんっつったら、われわれ世代のカリスマなわけですよ。中学生の時に見たドラマ『ロングバケーション』は鮮烈だったなぁ。だって恋人でもない男と女がひとつ屋根の下で暮らすんですよ。山口智子扮する南(あ、役名です)の履いてるズボンがどこで売ってんのてくらい派手なことにもびっくりしたし、瀬名(≒キムタク)のワイシャツ、アイロンかかってない!無造作!なんだこれ逐一オシャレが過ぎる!と感嘆の声を上げひれ伏す、みたいな感じだったんですよ、当時。

 そんな神様、北川悦吏子さんの新刊が出たっつったら、買わないわけにはいかんでしょう。
 本書は北川さんがTwitterで発信している「空から降るツイート」という詩のシリーズを、書き下ろしも加えて1冊にまとめたもの。タイトルにある通り、恋の始まりから終わりの予感、そして相手への思いを手放すまでの微妙な感情の揺らぎを、短い言葉に託している。
 なんというか、変わらないなぁ。ロンバケ時代と変わらず、言葉からみずみずしさがあふれている。粗削りとも思える走り書きのようなポエムは、あえて洗練させないことを大事にしているようだ。10代の頃、ノートの隅に書いた、誰にも見せるつもりのない小さな日記のようなひっそりとした詩の数々。
 ロンバケから20年近く。私は中学を卒業し、高校では校内1、2を争うさえない部活演劇部に入り、ゆるい大学に入り、会社員になり、会社辞めたりまた会社員になったりとかありました。男と別れ話がもつれて阿鼻叫喚の地獄絵図の争い……はなかったけど。北川悦吏子さんだってそうでしょう。ご結婚されてお子さん産んで病気を告白して、いろいろあったと思いますが、本書からはそれを感じさせない。感じさせたくないのかな。
 恋愛ドラマの名手との称号をほしいままにしてきた北川悦吏子。純粋で粗削りで不器用で切実な「あの頃」のポエムはさすが、年齢を感じさせなくてすてきです。53歳になった、1児の母だから紡ぐことができる言葉も読んでみたいなー、なんてこともチラッと思ったり思わなかったり……。欲張りですみません。
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

恋をしていた。
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