株価上昇で運用活発化 県内投資家 円安で外債にも注目


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 2000年前後のITバブル期以来となる2万円台を維持するなど、日経平均株価の上昇傾向を受け、県内個人投資家の動きが活発化している。おきなわ証券の2015年3月期決算における株式運用にかかる手数料収入は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による金融緩和で株価が上向き始めた13年3月期と比べると55・8%増の3億8800万円となった。

「口座が増えているというより、寝ていた資産が動きだしている」(担当者)という。県内の個人投資家は近年の株価動向をどのように評価しているのだろうか。おきなわ証券で株式を運用する2人の顧客に話を聞いた。
 夫と2人の子どもを仕事と学校に送り出し、午前中に家事を済ませる。午後は趣味の時間。株価は合間の時間を利用しスマートフォンで確認する。沖縄市に住む40代主婦の日常だ。株式の運用は「仕事を辞め、少しでも家族のお金が増えれば」と12年1月に始めた。約1年後、株価は上昇気流に入る。「担当から随時値動きについて連絡をもらう。プラスは出てる」。元本は約500万円。13年は163万円、14年は55万円の運用益を出した。
 常時保有する10~12銘柄のうち、半分は飲食店の割引など優待が目的だ。しかし企業動向への関心も自然と強まってきた。「韓国のMERS(マーズ)の影響で検査キットを扱う企業、日本のマイナンバー制度の導入では人材派遣業者が注目されている」。2年で運用を終える当初の計画は、東京五輪が開催される20年に引き延ばした。
 おきなわ証券の15年3月期決算における運用手数料は投資信託が前年同期比22・3%増の3億200万円、外国債券も2・2倍の3億2600万円とそれぞれ業績を伸ばした。株高のほか、最近2年で1ドル80円前後から120円台にまで進んだ円安も投資家の資産を動かす要因となっている。
 本島中部で農業を営む60代男性は9年前から運用している。「09年ごろには7千円の時期もあった。アベノミクスの前と比べると、今のもうけ幅は2倍くらいだ」と満足げだ。
 現在は国内株3銘柄、外国株4銘柄を保有する。業種はノンバンクやリース会社、会員制交流サイト(SNS)を運営する企業など。円安傾向を受け、ドル建ての株式にも注目している。投資信託2銘柄、外国債券1種類も保有する。男性は「運用益は6次産業化など農業にプラスになるように活用していきたい」と本業の事業拡大に活用する考えだ。(長嶺真輝)