【島人の目】暑いイタリア


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 イタリアは猛暑に見舞われている。暑いという言葉を通り越して、空気が燃えているような酷暑である。雨が降り続き気温が低下して、農作物や観光業に大きな被害が出た昨年とは正反対の現象だ。

 北部イタリアのピエモンテ州では、7月20日現在、大暑が原因とみられる死亡者が140人に上り、75歳以上の人の死亡率が約30%増えている。また同じく北イタリアのミラノでは先日、市内のカフェで倒れた高齢者が病院に運び込まれて死亡したが、そのとき彼の体温は44度に達していた。
 ことしの暑さは記録的な炎夏だった2003年を上回る気配。ヨーロッパが熱帯と化した同年は欧州主要10カ国内で暑さによる死者が計7万人も出た。イタリアでも1万8千人が亡くなった。そのほとんどが一人住まいの高齢者だった。
 家族の絆が強いといわれるイタリアでもお年寄りが孤独に生きていくケースが急増している。そうした人々は暑さで気分が悪くなっても助けを呼ぶことができず、一人で亡くなっていくのだ。
 北欧から見ればイタリアは南国だが、世界地図の上では北国である。前述のピエモンテ州やミラノ市などは北海道北部とほぼ同じ緯度にある。そこに住む高齢者は熱気への耐性が少なく、03年の極暑で多くのお年寄りが亡くなったとされる。
 北国のイタリアではクーラーを使うこともほとんどなかった。が、幸い03年以降はこの国でもクーラーを設置する家庭が増えている。ことしは高齢者が暑さの中にほったらかしにされて亡くなる、という酷薄は少ないと信じたい。
(仲宗根雅則、TVディレクター)