『ステーキに恋して』 牛と沖縄の意外な関係


社会
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『ステーキに恋して』平川 宗隆著 ボーダーインク・1600円+税

 著者の平川先生といえば大の沖縄そばジョーグーでヒージャージョーグー。沖縄そばはもちろん、アジアの麺類に造詣が深く、ヤギに関する著書も数冊出していて、生態や来歴、料理や食味にも詳しいヤギ博士でもある。

その平川先生の書いた本でタイトルも「ステーキに恋して」ということもあり、てっきりステーキの店の紹介をはじめ、おいしいステーキの焼き方や牛肉料理を中心とした話が掲載されているのかと思ったら、ウチナーンチュが牛を食べてきた歴史や食文化としての話がメインとなっている。
 とはいえ、獣医で県の農林水産部畜産課や県立農業大学、食肉衛生検査所所長などを歴任し、肉ジョーグーのガチマヤー(本人いわく)というだけあり、全体的に食肉としての視点で牛の紹介をしているので、興味のある題材と読み応えで、アッという間に読み終えてしまった。
 本の内容は4章から構成されており、沖縄と牛との関わりや牛の飼育農家の紹介、県産牛肉の安全性、老舗ステーキ専門店の紹介など多岐に渡る。中でも面白かったのが、牛がいつ頃から沖縄に来たのかや、グスク時代には牛が食用だった話など、また、使役として農業にも使われていたことや、現代の食用牛との形態の違いなどである。
 さらに中国への貢物に牛皮が含まれていることや、冊封使一行が来琉したときは、ヤギや豚肉もあるが、当初は牛肉をメインに支給していたことなど興味深く読んだ。
 ボクは県産牛肉のブランド化の確立は、昔からの在来牛の関わりによるものか、あるいは、戦後になって米軍への牛肉を供給する飼育農家が関連すると思っていたのだが、意外にも復帰後、県の指導や畜産農家の努力のたまものだということも、分かりやすく書いている。
 第1章から読み始め、第4章の県内初のステーキレストランの話や老舗ステーキ専門店の話に差し掛かると、無性にステーキが食べたくなってしまった。
 なるほど、読み終える頃にはナゼかステーキが食べたくなるため、本のタイトルが「ステーキに恋して」となったのだと思った。
 (嘉手川学・オキナワふうどライター)
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 ひらかわ・むねたか 1945年生まれ。2008年、鹿児島大学大学院連合農学研究科後期博士課程修了。1969年、琉球政府厚生局採用、県農林水産部などを経て現在、県獣医師会会長。

ステーキに恋して―沖縄のウシと牛肉の文化誌
平川宗隆
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