那覇港 物流エリアにバス運行 旅客増で安全確保


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
アジア最大級のクルーズ船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」から那覇港の国際コンテナターミナルに降り立つ乗客=1日午前8時すぎ、那覇港新港ふ頭

 那覇港新港ふ頭貨物ターミナルでの大型クルーズ船の受け入れが恒常化していることに伴い、那覇港管理組合は今月から、貨物ターミナルへのタクシー入構を制限し、旅客待合所のタクシー乗り場までシャトルバスで移動する運用を始めた。

急増するクルーズ船への対応で物流エリアを使わざるを得ない中で、荷役作業と乗客の安全確保を図る措置。一方で、本年度に寄港予定のクルーズ船については那覇港管理組合がシャトルバスの運行費用を肩代わりするが、4月以降の費用負担のめどは立っておらず、県観光部局や関係機関との協議を急ぐ方針だ。
 那覇市若狭のクルーズ船専用岸壁は1隻しか接岸できず、複数のクルーズ船や16万トン級の大型船が寄港する際には、国内外からの貨物を取り扱う那覇市安謝の新港ふ頭でクルーズ船を受け入れている。しかし、貨物ターミナルにはコンテナが積まれて死角が多いこともあり、港に降り立った乗客と作業中の荷役車両が衝突する恐れなどが指摘されてきた。
 6月22日には、大型クルーズ船が韓国での中東呼吸器症候群(MERS)を避けるため新港ふ頭に緊急寄港したが、送迎のタクシーが次々にターミナルに乗り付け荷役作業に影響が生じたとの報告があった。
 那覇港管理組合の松島良成企画室長は「本来は人流と物流のエリアを分けて運営したいが、観光振興の観点からクルーズ船の受け入れを拒むわけにはいかない」として、物流エリアでのクルーズ船受け入れの際の条件を検討。7月下旬、船舶代理店に対して(1)貨物ターミナル内ではツアーバスとシャトルバスのみを配置(2)ツアーバス以外の乗客や乗組員は、シャトルバスで船客待合所に移動(3)旅客待合所に観光案内所とタクシー乗り場を設置―などの新ルールを通達した。
 シャトルバスの手配には20万~40万円の料金がかかるという。来年3月まで予約が入っている分については管理組合が負担するが、次年度からの費用負担者は決まっていない。「原則として船社や船舶代理店で手配」としているものの、接岸に必要な経費が増すことで寄港地を沖縄から別の港に振り替えることを選択する船社も出かねず、費用負担を抱え込むことを余儀なくされる船舶代理店から反発が上がるのは必至だ。
 那覇港管理組合は「接岸料収入で本年度は費用負担するが、施設の維持管理に当てる収入を帳消しにし続けることはできない。クルーズ船振興で恩恵を受けている受益者による負担も検討する必要がある」(松島室長)として、県や観光コンベンションビューローなどに協議を呼び掛け、4月以降の対応方針を今月中にまとめたい意向だ。