『新装版 ルナティック雑技団 1』岡田あ~みん著


社会
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こじらせアラサーの心の傷
 どうやらすげえ美人らしいとか、今は旅館に嫁いで穏やかな暮らしを送ってるとか、活動休止から20年近くたった今もなお、あることないことうわさされる漫画家、岡田あ~みん。彼女の作品が「りぼん創刊60周年記念特別刊行」と題し、新装版として刊行された。当時小学生だった私をはじめ多くの少女たちの心に無駄に傷を残した伝説の作品が、待望の復刻を遂げたのだ。

 主人公の星野夢実は両親が海外出張の間、同じ学園に通う孤高の貴公子、天湖森夜(てんこ・もりや)の自宅に下宿することになる。生徒たちの憧れ、教師たちの誇り、女性教師の滋養強壮剤である森夜にはしかし、友達が一人もいない。彼は自分に友達がいないのは嫌われ者だからだと思い込んでいた。それを知った夢実は森夜の初めての友達になりたいと言う。森夜はその申し出を喜ぶが、彼の家には「神経が個性的」な母親がおり……。
 と、あらすじだけで読むと普通のラブストーリーのようだが、そこはやはり「少女漫画界に咲くドクダミの花」、予想を軽く凌駕している。
「こんな虚飾(うそっぱち)の世界、ふたりでひっかきまわして逃げちゃおうぜ!!」
「『あばよ』って!?」
 ……主人公が中学生のラブストーリーの、一体どこにこんなセリフが出てくるんだか、とお思いでしょう。本当に、ちょっとぶっ飛んでます。「あの女は魔性の女…男をまどわす夢食い妖婦(バンプ)」「少女の仮面のその下は獣盛りの東洋毒婦」……これを子供の頃、夢中で読んでいたんだよなと思うと、女をこじらせた原体験に近づいたような気がしてきます。
 幸か不幸かアラサー女子の心の片隅にどっかり座って離れない岡田あ~みん。腹痛くなるほど笑うという経験をくれたこの漫画に出会えたのは、やっぱりすごく、幸せなことだと思います。
 では最後に、主人公・夢実と名キャラクター、愛咲ルイくんの名セリフでお別れしましょう。
「学校なんかやめちゃってデカダン酔いしれ暮らさないか」
「白い壁に『堕天使』って書いて!?」
 (集英社 600円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

新装版 ルナティック雑技団 1 (りぼんマスコットコミックス)
岡田 あ~みん
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