『国防政策が生んだ沖縄基地マフィア』 「振興」に巣くう利権、談合


社会
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『国防政策が生んだ沖縄基地マフィア』 平井康嗣、野中大樹著 七ツ森書館・1944円

 黒ベタのバックに白抜きの題字が大きく目に入る。帯の推薦文を書いた佐高信氏の「沖縄に群がるマフィアの内幕を抉(えぐ)る衝撃の書」というコピーが本書の内容を的確に表現している。著者は「週刊金曜日」編集長の平井康嗣氏と同誌記者・野中大樹氏の共著の形だ。内容も「週刊金曜日」に掲載された記事をもとに、名護市長選挙前の政治事情を踏まえて、名護市に巣喰(く)う基地マフィアの実態に焦点を当てた興味深い内容となっている。

 辺野古新基地建設は1995年の米兵3人による少女暴行事件が発端だ。
 当時の橋本龍太郎総理と米国のモンデール駐日大使の間で「沖縄に関する日米特別行動委員会」(SACO)において普天間基地の7年以内の全面返還を決定した。しかし、日米両政府は、普天間基地の代替施設として、辺野古新基地建設を含めていたため、沖縄県民は話が違うということで明確に反対の意思を表明した。辺野古新基地建設の長期にわたる迷走の始まりである。
 辺野古新基地建設に執念を見せる安倍政権と、オール沖縄の県民党候補として誕生した「辺野古新基地反対」の翁長雄志知事とは双方とも一歩も譲らない全面対決の構えを見せてきた。しかし、ここにきて、双方が歩み寄り、辺野古新基地建設に関しては1カ月の休戦協定が結ばれた。この1カ月の間に、辺野古新基地建設に向けた話し合いが持たれることになったが、見通しに関しては否定的な見方が多い。
 つまり、休戦協定が終了すれば、再び新基地建設が強行され、流血の惨事という事態も十分に想定される。
 この新刊は、こうした状況を生んだ背景にもメスを入れている。辺野古新基地建設の推進派には、北部経済振興を第一義とする勢力が存在する。基地建設を受け入れる代わりに過疎化している北部地域の活性化を要求しているのだ。そこには必ず利権や官製談合といった負の要素も入り込んでくる。最終章では、金秀グループの呉屋守将会長、照正組の照屋義実氏、琉球大学・島袋純教授、作家・目取真俊氏らのインタビューも集録されている。沖縄県民にはおススメの一冊だ。(岡留安則・ジャーナリスト)
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 平井康嗣(ひらい・やすし) 1969年、千葉県生まれ。2010年から「週刊金曜日」編集長。

 野中大樹(のなか・だいき) 1982年、熊本県生まれ。2010年に株式会社金曜日入社、「週刊金曜日」編集部配属。

国防政策が生んだ沖縄基地マフィア
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