【島人の目】イタリアも世界も「燃えた」夏


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 8月に僕はこのコラムでイタリアの暑い夏について書いた。その後、ことしは異常気象が続く近年のうちでも特に、世界的に暑い夏であることが明らかになった。

 どれくらい暑かったかというと、アルプスに近く熱帯夜のないここ北イタリアでも、7月にはクーラーをつけないと寝苦しい日があった。またどんなに暑い夏でもひんやりとしている標高1千メートルにある山小屋でも暑さを感じた。
 ドイツでは観測史上初めて40度を超える地域が出た。アルプス山脈では、温暖化によって氷河の溶解が進んできたが、ことしはそれが加速した。スイスのマッターホルンでは、暑さで凍土が溶けて地盤が緩み、落石が発生して直撃された登山者2人が死亡した。同じころ、パキスタンやインドなどの暑い国々でさえ熱波による死者が3千人以上出ていた。
 異常気象が取り沙汰される中でも、特に異常なことが多かったことしの夏。そうこうするうちにことしの7月は過去4千年間で最も暑い7月だったと、アメリカの海洋大気庁が発表した。計器などによる観測データは過去およそ130年分しか存在しない。それなのになぜ4千年も前の7月の気温が分かるかというと、木の年輪やサンゴや氷河などの氷を調べることで割り出せるのだという。
 それでも、少なくともここ北イタリアに関する限り、8月20日ごろには急に涼しくなって気象は普段と変わらない状態に戻った。要するに異常気象とは、温暖化で単純に気温が上がることではなく、何が正常で何が異常が分からなくなる状況が頻発することなのだろう。この先もそれは続く。
(仲宗根雅則、TVディレクター)