『私たちのハァハァ』 女子高生4人組のロードムービー


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 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で、ゆうばりファンタランド大賞(観客賞)と、将来の活躍が期待される作品・監督に贈られる「スカパー!映画チャンネル賞」の2冠を受賞。北九州の女子高生4人組が、ロックバンド「クリープハイプ」のライブを見るために、勢いで東京に向かうロードムービー。一見たわいない話であり、男子狙いのJK映画と鼻の下を伸ばして見にいくとちょっと期待を裏切られるかも。

 そもそもキャストからしてひと味違う。撮影当時、全員現役高校生だったとはいえ、シンガー・ソングライターの井上苑子、タナダユキ監督『ロマンス』のエンディングテーマで清らかな歌声を披露している女優・三浦透子、ユニークな動画を投稿して話題となった大関れいかと、自分を表現する場をすでに獲得し、地に足着いた活動をしている面々。カメラの前でも臆することなく、堂々と感情をさらけ出す。
 その彼女たちを使って描き出されるのは、ひと夏の冒険というキラッキラな青春よりも、少女たちの危なかしさ。それこそが、大人たちが思わず惹きつけられてしまう彼女たちの魅力なのだということを、本作は否応なしに突きつけてくる。
 家出同然の自転車での出発。体力もお金もなくなりヒッチハイクに野宿、果ては夜のお仕事で資金稼ぎをする。無謀な旅は仲間割れも引き起こすが、大人たちの誘惑や罠をするりとかわしつつ東京までたどり着いてしまう彼女たちのパワー。大人のしたたかさと少女の無邪気さの混在がまた、たまらない。
 そう松居大悟監督は少女を理想化して描かない。そこが彼の作品が支持される理由なのだろう。★★★☆☆(中山治美)

 【データ】
監督:松居大悟
脚本:舘そらみ、松居大悟
出演:井上苑子、大関れいか、真山朔、三浦透子
9月12日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

(c)2015「私たちのハァハァ」製作委員会
中山治美