『カプチーノはお熱いうちに』 イタリア好きは必見


社会
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 トルコ出身のイタリアの人気監督フェルザン・オズペテクの新作。日本でもヒットした『あしたのパスタはアルデンテ』に続き、今回もコメディー要素たっぷりに切なくも温かい家族の物語がつづられる。コミュニケーションやセクシャリティー問題への目配りでも、両作は相通ずる。

 舞台は、アドリア海に臨む南イタリアの街・レッチェ。エレナは同僚の恋人と恋に落ちて結婚し、2人の子供に恵まれる。ゲイの親友と始めたカフェの経営も順調だったが、検診でがんが見つかり…。何と言っても、25歳での出会いと13年後の結婚生活の時制を大胆に交錯させながら、見る者の感情を振れ幅大きくコントロールしていくオズペテク監督のストーリーテリングがうまい。
 だが、振れ幅の大きいのはこの監督の一貫した持ち味で、展開もキャラクターもカメラワークも、さらには天候までも全てが極端だ。冒頭の激しい雨の中での出会いにスローモーションを用いるのは明らかにやり過ぎだが、やり過ぎと大胆さは紙一重で、ワンシーン=ワンカットで昼から夜にアクロバティックに転じるカフェの描写は、これだけでも本作を見る価値ありと言いたくなるほど。
 ラストも巧妙で、難病ものなのに後味も悪くない。イタリア好き、イタリア映画好きは見逃せない一本だろう。★★★★☆(外山真也)
 【データ】
監督・脚本:フェルザン・オズペテク
出演:カシア・スムトゥニアク、フランチェスコ・アルカ、フィリッポ・シッキターノ
9月19日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)