『アントマン』 身長1.5センチのニューヒーロー


社会
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(C)Marvel 2015

 マーベル・コミック原作映画のニューヒーローは、何と身長1.5センチ。仕事も家庭も失った人生崖っぷちの中年主人公(アメコミ・ヒーローのオヤジ率高し!)が、天才科学者が発明した特殊スーツで小型化して、世界平和のために、ではなく娘に好かれたいために悪に立ち向かう。

 ハリウッド映画には、『ミクロの決死圏』『ミクロキッズ』など科学の力で人間が小さくなることで、見える景色が一変する世界を扱ったSF映画の系譜がある。今回も、一般家庭のありふれたアイテム(じゅうたんや鉄道模型など)が壮大な冒険の舞台へと一瞬で早変わりして楽しませてくれるが、そもそも目線の高さの違う者同士が対峙するシチュエーションというのは、映画的な空間設計にうってつけ。しかもアントマンは、小さくなったり元に戻ったりと自在に視点を変えられるし、巨人(巨大化)と違って動きも機敏だ。特撮技術がこれだけ進歩した今のハリウッドで、アクション映画の主人公にこれほど相応しいキャラクターが他にいるだろうか?
 では、その特長を生かせているか、カメラの位置は的確かと考えると、物足りない点は多々あるものの、アントマンという存在が秘める可能性は計り知れない。どうやら今後、アベンジャーズの新たなメンバーに加わりそうな気配に、その期待はさらに高まる。★★★★☆(外山真也)
 【データ】
監督:ペイトン・リード
出演:ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス
9月19日(土)から全国公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)