【交差点】福州にみる車社会


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 社会の経済発展の度合いを知る一つのバロメーターに「自動車の普及」がある。
 1998年、初めての福州勤務のころ、目に付いたのは「自転車」と「オートバイ」であった。今、二度目の福州勤務で目に付くのは、道路を埋め尽くすほどの自動車の列である。実に見事なまでに車が増えている。「そこのけ、そこのけ、車が通る」。自家用車を運転する持ち主も誇らしげで、自慢の愛車を走らせている。
 一方、恨めしそうに横目で車に見入るのが、歩行者。横断用の信号は青信号にもかかわらず、車に遠慮しながら横断歩道を渡るのである。やはり車が主役であろう。「車優先」の感がするのも、今の福州では仕方のないことである。
 98年ごろの自動車の台数は約25万台で、タクシー、バス、貨物車といった営業車両が中心だった。それが、今や100万台を数え、しかも自家用車が大幅に増えている。
 以前、住んでいたアパートの周辺では、ほとんど車を目にすることはなかった。アパートの自転車置き場は、大小さまざまな自転車で埋め尽くされていた。
 今、その場所は車に取って代わり、しかも少しのスペースも余すことなく、周辺の空間もすべてが駐車場と化しているのである。
 経済の発展と所得の増加とともに、人々はマイカー購入に富の象徴を見いだしている。それに拍車を掛けるがごとく自動車ローン制度も登場。道路整備もいたるところで見られ、各所で信号や横断歩道の設置も進んでいる。福州は、「車社会」の様相を一段と深めている。
 洋の東西を問わず、経済発展とともに「車社会」を迎えている。さて、これから福州の車社会はどうなるのだろうか。
 (仲宗根信明・沖縄県産業振興公社福州事務所長)