『合葬』 時代に翻弄された彰義隊の若者たち


社会
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 徳川慶喜について大学の卒論も書いた水戸出身者としては、嬉しい映画化である。原作は、故・杉浦日向子の同名漫画。第十五代将軍・慶喜が江戸城を無血開城して去る際に、お見送りをした「彰義隊」のメンバーの混沌とした日々を描いた歴史ドラマだ。

慶喜の名誉回復のため、新政府に対して武力でモノを言おうとする血気盛んな輩と、事実を受け入れようとする穏健派に分かれ、隊の中で不穏な空気が流れ始めた。そんな時代に翻弄される3人の若者を中心に描く。
 監督は、本作が初の劇場公開作となる新鋭・小林達夫。現代にも通じる青春劇のように、時代劇用語少なめのセリフに、音楽やカメラワークなど、ところどころ新たな試みに挑んでいる。しかし大胆さに欠けて、逆に中途半端な印象を与えてしまったのが残念。
 本作を見ながらつい、今は亡き歌舞伎俳優・中村勘三郎さんがよく口にしていた言葉を思い返していた。「型を身につけねば“型破り”になれない」と。これ、勘三郎さんが『全国子ども電話相談室』を聞いていた時にレギュラー回答者の無着成恭さんが言った言葉らしいが。名言だな、これ。★★☆☆☆(中山治美)
 
 【データ】
監督:小林達夫
脚本:渡辺あや
出演:柳楽優弥、瀬戸康史、岡山天音、門脇麦、オダギリジョー
9月26日(土)から全国公開
(共同通信)
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。

(C)2015 杉浦日向子・MS.HS/「合葬」製作委員会
中山 治美