【交差点】東洋のバレンタインデー


社会
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 中国の伝統行事である春節、元宵節、清明節、端午節、七夕節、仲秋節、重陽節には日本の風習との共通点もあるが、元祖中国ならではの風習もあり興味をそそる。
 今年の七夕節は新暦の8月19日にあたる。
 東洋の情人節(バレンタインデー)ともいわれる七夕の日は麻花(マーファー)を食べる。麻花は形状が麻縄に似ているところから名付けられている。日常的に食べる一種のおやつで主食にもする。小麦粉を水で溶きこねて拍子木に切り、両手で左右に長く引いて伸ばし、両端をあわせてまな板に打ちつけ、もう一度伸ばし三つに折って縒(よ)り、さらに二つに折ってより合わせて油できつね色に揚げると、長さ30センチほどの麻花ができる。
 かつては麻花を上手に作れることが良い嫁とされていた。七夕節のころ、スーパーの実演販売所には、麻花を買い求める女性たちで列ができる。私は七夕節を意識した列にこそ並ばないが、やはりこの季節、麻花を買う回数が多くなる。
 七夕節には縫い針にも願いを託す。女性たちは針を持ち寄り水を張ったボールに集めて月光の下に置く。織姫を見習って、手先が器用になるようにとの願いを込めた風習のように思われる。七夕節には町でよく見掛ける吉祥の鳥・喜鵲(カササギの一種)がいなくなる。天の川に喜鵲の橋を架けるため天に集まるらしい。織姫がこの橋を渡って彦星と年に一度のデートをする。
 日本の七夕が子供たちのお祭りであるの対して、中国の七夕は婦女子を対象にしており、幸せな結婚生活を願う娘たちと、それを積極的に支援する風習や言い伝えがある。
 (池宮城克子・雑誌編集者、ウチナー民間大使)