【チャイナ網路】フローリスト・斉云


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 結婚式場を埋め尽くした花は、咲くべき時を知るかのように、セレモニーの開始とともに開き始め、終了時には見事に咲きそろった。目にするものはもちろんのこと、香りも音も用意される料理の味も、五感のすべてに細やかな配慮と快感を届ける。それがフローリスト・斉云の仕事だ。
 「男は戦うもの」という考え方がいまだ強い台湾で、男が花を仕事に生きるのは容易ではなかった。親族にまでさげすまれながら華道クラスに通い、高校2年でフラワーアレンジの全国コンテスト2位に入賞。彼の心は決まる。今では欧州の有名ブランドのショーを手掛け、タイ王室やインドネシア政府の仕事も任されるフラワーアートのパイオニアだ。しかし、拠点は依然路地裏の看板もない小さな店のまま。マスコミへの露出が少ないのも、セレブの信頼を集める理由だと聞く。
 短く刈り込んだ髪が印象的な39歳。「花が命」と語る氏にとって、巨大プロジェクトも3千円の花束も花は花。豪邸を飾る一方、一般家庭のベランダの花のケアをするべく、月々わずか数千円のサービスを始めている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学准教授)