【交差点】天からのお土産


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 中国、福建省、福州市。このキーワードは、朝貢貿易、久米36姓、那覇市福州園、福建・沖縄友好会館、沖縄県福州事務所、姉妹都市・友好都市、琉球人墓地などを県民に連想させる。
 中でも沖縄と中国・福建との600年の歴史的関係を象徴する「琉球人墓」は歴史の証人として、訪れる者の心をつかみ、深い感動を与える。
 その墓地で、新たな友好のドラマが生まれた。
 昨年、某家の関係者一同が祖先の墓を探し求めて福州を訪れた。歴史書や学術関係資料、関係者からの情報を基に幾度も現地調査を重ねてきた。
 半ばあきらめかけていたところに福建師範大学や市政府などの協力で、琉球人墓地とはだいぶ離れた場所で「某家の墓標」のみが発見された。子孫らは琉球人墓地内に「新たなお墓」の移転・建立を福州市に要請した。
 ところが市政府外事弁と福州事務所との交渉では琉球人墓地は市管理の歴史的文化遺産(場所)で当該地への新たな建築は不可能となった。
 だが、子孫らは「沖縄の祖先崇拝」「亀甲墓」など沖縄と福建省との文化的共通項を持ち出し、交渉を再開。市政府担当幹部の沖縄への熱い思いも奏功したのであろう。時が流れ忘れかけたころ、「某家の墓が琉球人墓地内に新しく建立された」との市当局からの吉報が事務所に飛び込んだ。
 この逆転劇は、まさに天の声。先達や某家の「ウヤファーフジ(ご先祖)」の力もあってのこと。ご先祖さまに感謝感激の思いを強くした出来事だった。
 (仲宗根信明・産業振興公社福州事務所長)