【交差点】福州の朝市に学ぶ


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 朝5時ともなると近くの住民が野菜や魚・肉と食材を求めて市場(朝市)に集まる。もちろん、スーパーや専門店でも買い物をするが、やはり朝市は、品ぞろえの多さや新鮮さなどが人気の理由であろう。
 買い物客は、欲しいものを一つ一つ手にとり品定めをするが、そのしぐさは「雑」である。野菜、果物と手当たりしだい手にとっては、平気で元の場所に投げ入れる。
 私の目には、結局は買いもせずに商品をもてあそんでいるようにさえ感じられる。見ている店主はよくも黙って眺めていられるものだと感心するばかりである。
 しかし、実際のところ自らの買い求める商品を真剣にチェックしているのであり、その結果、駄目なのはその場で見切りをつけ投げ戻すのである。
 買い物客は、食材だけでなく他の商品購入でも同様な行動にでる。とにかく、すべてといってよいほど手にしていじくり回して品定めに余念がない。商品説明書や売り手の説明など、信用などせず、自らを信じ最終的には己で良しとしたものを買い求めるのである。
 最近、中国製品の品質問題が欧米でも取りざたされたり、日本でも食材問題などが起きている。経済社会が高度化し、複雑化する中、生産者や消費者は自らの選択や決定を多くは他人(機関)、あるいは社会システムに任せざるを得ないのも事実である。
 いまこそ原点に返り、自らを見つめ直し、慎重な行動をとるべきである。品定めの結果、駄目な商品を投げ返す中国の朝市のおばさんのように、最終消費者がじっくりと品定めをし、自らが信じるものを買い求めたい。
(仲宗根信明・産業振興公社福州事務所長)