【交差点】中国・競争社会の一端


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 「うちの子は今度の算数のテストは80点。クラスでは中位ぐらい。次回は頑張ってもらわないと大変ですよ!」とお隣に住む中国人のお母さんが気をもみながらこぼした。
 これだけの成績なら内容を理解しており、決して落胆するほどのものでもない。お隣さんという「よしみ」と「お世辞」も含め、「素晴らしいですよ、良い成績じゃないですか!」と慰めるのだが、一向に気が晴れないようだ。
 13億人もの人口を抱える中国社会での猛烈な競争の一端を教育の場に垣間見る思いがした。
 子供たちは小学、中学、高校、大学と厳しい競争のなかで、その都度ふるいにかけられる。それに打ち勝つためにも、小学校の高学年にもなると昼間は学校での授業、放課後は深夜まで先生宅での下宿さながらの課外学習を受ける。
 子供の生活パターンは「勉強ずくめ」スタイルとなり、家庭は3世代(子供本人=両親=祖父母)が一丸となって「学校=勉強=競争」を最も重要なこととして位置付ける。しかも、そのことが家庭から地域へと広がりを見せながら当然のごとく繰り広げられる。
 中国歴史にみる「科挙制度=選抜試験」の厳しさも聞きおよぶが、それにしても、今日のような「家族ぐるみの闘争」は競争社会のなかで培われたものであると容易に察することができる。
 「競争に勝つためには現実をしっかりと見つめ、その道を着実に進むしかない。さもなければ落ちこぼれか社会の隅っこに追いやられる」とお母さんは声を張り上げる。
 一方、チャイナデイリー(全国紙)は「中国における詰め込み教育は子供たちの創造性をむしばんでいる」と警鐘を鳴らす。
 (仲宗根信明・産業振興公社福州事務所長)