【交差点】福州の提灯祭り


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 正月(旧暦)も終わり、家庭や企業あるいは地域で新たな年へと期待を込めた動きが中国全土で始まっている。
 ここ福州では、提灯(ちょうちん)祭りが2月21日(旧暦1月15日)にあった。それぞれにさまざまな夢や願いを提灯に託すのであろう。街の至るところ、郊外の田舎でも一晩中、爆竹が鳴り響き踊りや歌など多彩なイベントが繰り広げられた。
 福州市のある村では、地域の祭りごとの中心となる寺の行事で、集落内を行列をなして練り歩き、各家庭や店に入っては口上を述べ、踊るにぎやかな祭りがあった。これからの1年、無病息災、健康で家内安全、商売繁盛など幸せを祈願する地域ぐるみのお祭りである。
 仏陀(ぶっだ)の顔を仮面にした人や弥勒菩薩の格好で衣装をまとった踊り手の熱演など、仮装行列の様相である。思えば沖縄の八重山地域での豊年祭でよく見られる「弥勒」の格好によく似ており、異国とはいえ、同じ文化の流れを垣間見る思いがした。
 市内の繁華街や中央広場付近では、祭りも現代化し、どこにもあるような人ごみと商店街の飾りつけなど華やかさのなかに車と人のぎゅうぎゅう詰めとなる。提灯もお店の宣伝を思わせる形も多く、素朴な豊年や家内安全などの祈願どころか広告塔を想起させる。
 それにしても、国や地域、時代は違っても、理想を求めそれを祈願する思いはみな同じであろう。「明日に、この1年に、いや未来に」との祭りに託された思いを感じる季節である。
 (仲宗根信明・産業振興公社福州事務所長)