【島人の目】又吉喜美枝/強制収容所の黒人


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 「Noirs dans les camps nazis(ナチス・キャンプの黒人)」(セルジュ・ビレ監督)というドキュメンタリーを、パリ市内の映画館で見た。
 フランスがナチス・ドイツに占領されていた時期(1940―44年)、当時、フランスに滞在していた多くのアフリカ系、カリブ海の島々の人たちも強制収容所に連行された。その他、レジスタンス運動をしていた人、当時、フランスにいた外国籍(アジア系も)も、同じ道をたどった。
 そのフィルムは、収容所からの生還者、彼らの家族、知人、友人らの証言を集めたものである。時折、収容所の写真が出てくるが、それは、必ずしもタイトルにある「黒人」だけを集めたものだけではない。
 このフィルムは、10年前に制作されたもので、当時でもかなり高齢の人たちが、自分の体験談、友人らから聞いた話を写真、資料を見ながら伝えていた。
 フィルムでは、どれくらいの数の黒人を含めた少数民族が収容所に連れ去られ、どれくらいが生き延びることができたのか、分かっていないと言っていた。ナチス・ドイツが犯したユダヤ人の悲劇のほかにも、そういった人たちがいたことも記憶されるべきだろう。
 このドキュメンタリーの中でレジスタンス生還者の家族の一人がある映画を見たときの話をしていた。「それは刑務所の話で、その内容は父から聞かされた話と酷似していた。映画の中のことだが、私には生々しく、見るのは耐えられなかった」
 歴史の負の部分を過去のものとしないためにも、語り継いでいくことは、大切なことだとあらためて思う。
(フランス通信員)