【島人の目】平安名純代/モンパチと琉球の心


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 歌が与える影響力というのは実に大きい。耳に残る旋律に乗せ、心に深く染みていく歌は、時として聞く者のなかで大きな輪を静かに広げていく。
 沖縄ブームに火をつけた「ちゅらさん」と対照的に、沖縄が抱える陰の部分も表現し、沖縄音楽の新時代を到来させた「モンゴル800」の米初公演がいよいよ幕を開ける。
 「モンパチ」は、地元でデビュー後、一躍全国区に躍り出た人気バンド。彼らが若者たちから大きく支持された理由の一つは「聴くと元気が出るノリの良さ」。詞よりもリズムやメロディーという若者たちを演奏力でつかみ、ずしりと重いメッセージを真っすぐに彼らの心に届けた。
 米同時テロ直後に発売されたアルバム「メッセージ」に収められた「琉球愛歌」では、「すべての国よ うわべだけの付き合いやめて/忘れるな琉球の心 武器使わず自然を愛する」と、沖縄という社会に生まれた若者だからこそ、訴えなくてはならない思いをつづっている。
 各方面で花開いた沖縄ブームを、アメリカで見守る県出身者らの思いは複雑だ。基地問題に激しく揺さぶられる現実へのあきらめも複雑に交差する。モンパチは、そんな彼らを「琉球の心を忘れるな」と、励まし続ける。
 心に響く歌というものは、国境や世代を瞬時に越えて世界を駆け巡る。米公演主催のR60の元には、「モンパチの曲をきっかけに沖縄戦を学び、琉球の心を広げることが世界平和につながると学んだ」という多くの声が寄せられている。
 戦争の歴史の上に成り立つ島々で生まれ育った若い世代が、歌を通して迎えた新しい夜明け。その朝日はもうすぐアメリカにも届く。(米国通信員)