【島人の目】又吉喜美枝/暴動と若者


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 知り合いの13区管轄の警察官に「スーワム広場」に住んでいる、と言うと彼は開口一番に「危険な場所」と答えた。そこには年がら年中、アラブ系、アフリカ系の若者がたむろしている。彼らは人に危害を与えるということはない。特に「彼らは何もしないが、しかし、気を付けるに越したことはない」と警察官は注意する。
 週末の夜になると、大声を出して騒いだりするが、あとは、ただ広場でぶらぶらしているだけだ。そういう彼らを見て、ルームメートたちと話すのは「彼らはやることがないのだろうか」。

 数年前に見た、北野武監督の映画「キッズ・リターン」は東京の下町を舞台に「希望を持ちたくても、持つことのできない若者」の焦燥感が描かれたいた。
 今年の夏、パリ郊外のアラブやアフリカの移民の多い地区で、若者が殺された時、街の市長は、サルコジ内相の「この地域を一掃する」と言った発言に対し、「そんなことよりも、彼らにとって楽しめることをつくっていくことが大切だ」と反論した。全くその通りだと思う。
 最近、フランスで起きた暴動には、この国のアラブ、アフリカ地域との関係、若者の失業率の高さ、そして(恐らく)まだ残る階級社会など、歴史的、社会的な要因も含まれ、それが爆発したものだ。
 大統領の言う「公共秩序、法の回復」も大事だが、移民も含めすべての若者にとって「希望の持てる社会」と構築していくことも大切だろう。
(フランス通信員)