【交差点】靖国参拝の余波


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 小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対し、中国、韓国を中心としたアジア各国や、日本の政治、民間団体等からもさまざまな意見が出ている。ちょうどそのころ、私は浙江(せっこう)省の義鳥から上海へ向かう汽車の中にいた。
 汽車内ラジオでそのニュースを流していたのだが、同行していた中国人の同僚が参拝のことを質問してきたとき、不安と肩身の狭さを感じた。車両内には友人以外の中国人も多数乗車しており、同僚からの質問で私が日本人だと気付いたのであろう、こちらの話を注意して聞き始めたのである。
 こういった問題は各国の歴史的観点および認識の違いから、とてもデリケートな事柄であるのはこちらも同じ。私の一言によって周りの中国人の感情に火をつけ、大討論会に発展するのを恐れた私は何気に席を立ちその場を離れてやり過ごした。
 その後、上海での商用を済ませ食堂で食事をしていた際、今度はテレビのニュース番組で参拝問題が再度流れ出した。気になるらしく食事をしながらも皆テレビにくぎ付け。するとまた同僚がその話題を持ち出そうとしたので大きく咳(せき)払いをしてその話題を避け、目の前にある料理をただ黙々と食べ続けた。
 結局、参拝問題とは関係なく取引は順調に終えたのだが、現在国交間における問題が未解決で山積みな状態の中では、今後の中国ビジネスにも多大な影響が出てこないとも限らない。スムーズに事が運び笑顔での帰路の途中、わずかながらも、心から喜べない複雑な心情が胸に残った。
 (吉元耕己・中国沖縄民間大使)