【交差点】3イン1


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 ジャカルタの朝の渋滞はすさまじい。片側3車線に車が横に5―6台並び、そのすき間を探してバイクが突っ込んでくる。所構わず止まるバス、外側車線から強引に右折するタクシーなど、引っ掛けたり、ぶつけるのはざらで、後部座席に座っているだけでぐったりする。

 1992年から、ジャカルタ州政府が策を講じた。「3イン1(スリー・イン・ワン)」がそれ。1台の車に最低3人乗っていなければならない、というルールだ。朝のラッシュ時(午前7―10時)に渋滞の激しいスディルマン通りで乗り入れ規制をかけ、運転手と2人、あるいは1人の車を減らし、渋滞を緩和する考えだったのだろう。
 しかし、間もなくジョッキーと呼ばれる職業が生まれた。規制区域の手前で待ち、人数の足りない車に同乗する。いわゆる取り締まり対策の人数合わせである。車が規制を抜けると、元の場所に戻り新しい客を待つ。朝7時前になると、規制区域手前のあちらこちらに何百人のジョッキーが立つから、渋滞緩和は期待できるはずがない。
 車窓から「意味のないことを…」といらだった気持ちをぶつけていると、同乗のワイフが教えてくれた。「3イン1はみんな評価しているわ。渋滞対策にはならなかったけど、失業対策には十分なっているって…」
 確かに、インドネシアの失業者問題はもっと深刻だった。昨年初めから、夕刻のラッシュ時(午後4時半―7時)も「3イン1」が実施されることとなった。さらなる効果を期待されてのことであろう。インドネシアは奥が深い。在10年程度の私の思慮レベルでは、まだまだ足元にも及ばない。
 (太田勉・在インドネシア、企業経営)