61年の歴史を受け継ぐ
沖縄市中の町にある「のぼりや製菓」。長年地域に愛されてきた老舗製菓店だ。店内には洋菓子、和菓子、焼き菓子、沖縄菓子など、約100種類の商品が並ぶ。創業者の故・登(のぼり)弘道さんは多くの商品を生み出し、弟子も輩出してきた。従業員はもちろん、地元の人たちに支えられ困難も乗り越えてきたのぼりや製菓。創業者の長女で現社長の與座美香さんに話を聞いた。
甘い香りに包まれた店内には、ジャーマンケーキや黒糖ケーキ、生クリームケーキなどさまざまなスイーツが並ぶ。「のぼりや製菓」は、故・登弘道さんが妻の故・マツさんと共に1962年に創業。米軍基地内のベーカリーで働いていた経験を生かし、当時では珍しいケーキを販売した。
弘道さんが作るのは、沖縄の人の口に合うようにアレンジしたケーキ。滑らかな舌触りのクリームを使用した甘さ控えめのバターケーキは評判を呼んだ。本土復帰後には、和菓子などの製造も開始。80年代の全盛期には、県内に7店舗を展開。従業員も30人の職人を含む80人を抱えるほどに成長した。
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弟子の育成にも力を注ぎ、独立を推奨した弘道さん。サポートも惜しまず、「オヤジ」と呼ばれ慕われてきた。弘道さんが育てた弟子の中には、有名店のパティシエも多くいる。
応援に背中押され
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経営者ながら、経理から配達、県内外のイベント出店、地域の活動などに忙しい美香さん。店を手伝い始めたのは約20年前にさかのぼる。「経営が大変だと聞いたので、親孝行としてちょっと手伝おうかという気持ちで始めた」。父に「社長になってほしい」と言われたものの反発。OBたちからは「お店をなくしたら許さん」とも諭された。「のぼりやのおかげで今がある」と言ってくれる弟子や業者から当時の話を聞いていくうちに、のぼりやの存在は大きくなっていき、再建にも尽力した。
「ずっと頑張ってほしい」「のぼりやのケーキで育ってきた」と声をかけてくれる常連客の言葉も励みになる。美香さんは「ここまで続けてこられたのは、地域のお客さまあってこそ」だと話す。
2012年には50周年のパーティーを開催した。これまで携わってくれた従業員たち約100人に加え、近隣の人や業者も招き、約200人が集まった。弟子たちもお菓子の家やチョコレートの銅像など、特別に作品を作って感謝を表した。当時健在だった両親は「『よくやってくれた』と大喜びしてくれた」と振り返る。
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沖縄の味 県外で人気
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現在の一押し商品は創業当時から販売している「ジャーマンケーキ」だ。コロナ禍に県外の物産展や展示会に出品したところ、好評を得たのがきっかけで、通信販売にも乗り出した。利用者の声を反映し、お土産に便利な個包装タイプも展開している。「60年以上の歴史は強み。今後は復帰以前にあった商品の復刻版なども企画していきたい」と美香さんは話す。やりたくないと思ってきた社長業。今は「両親が頑張った証を伝えていくのが私の使命だと思う」と笑顔を見せた。
(坂本永通子)
のぼりや製菓
沖縄市上地1-11-1
TEL 098-932-7895
営業時間 10:00~21:00(日・月曜は18:00まで)
(2023年9月21日付 週刊レキオ掲載)
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