【嘉手納】無人偵察機MQ9の嘉手納基地配備計画を巡って、地元の嘉手納町議会(仲村渠兼栄議長)は10月30日の臨時会で、計画に抗議する決議・意見書を賛成多数(賛成11、反対3、欠席1)で可決した。基地諸問題に対し全会一致の可決が“不文律”だった町議会にとって、賛成多数は異例の結果だ。「今後基地被害を訴える声が弱まるのではないか」という声も議員から漏れる。今回の結果は町議会にとって大きな転換点となりそうだ。
嘉手納基地周辺の地元議会による配備計画そのものへの決議は初で、町内外から動向が注目されていた。町議会基地対策特別委員会で配備計画の見直しを求める方針を確認して以降、當山均委員長や仲村渠議長を中心に全会一致可決に向け、保革問わず賛同できるよう文面の修正を重ねてきた。
議案提出者の當山委員長は「これまでも基地が所在する地元議会として、住民の基地被害に視点を当て抗議してきた。全会一致は要請の場で重く受け止められてきた」とその意義を強調した。
一方で宇栄原京一、古謝友義、奥間常明の3氏が決議・意見書に反対し、全会一致可決にはならなかった。体調不良で欠席した安森盛雄氏も反対討論を予定しており、実際は4氏が反対意見だった。採決の前に反対討論や質疑はなかった。
當山委員長は「全議員に配慮し妥協点を見つけて動いてきた。しかし反対討論も質疑もなく、なぜ反対したのか理解ができない」と首をかしげる。
本紙の取材に4氏は、決議・意見書の趣旨に理解を示しつつも、南西諸島を巡る社会情勢から無人偵察機の必要性を理解したと説明した。安森氏は「沖縄近海の状況は以前と異なってきている」とした上で、「配備が始まっている中で計画見直しを実現できるわけがない。事故が起きないよう管理を求めるのであれば賛同した」とこぼした。
保守地盤の嘉手納町であっても、住民の不利益につながる基地問題に対しては、町議会で一貫して全会一致で抗議をしてきた歴史がある。仲村渠議長は「重要な議案を全会一致で可決できず正直ショックだ。住民の声を代弁する力が失われていってはいけない」と語った。
(石井恵理菜)