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野國總管の事跡新版発刊 嘉手納元教育長伊波勝雄さん 新資料加味、遺徳継承に焦点


野國總管の事跡新版発刊 嘉手納元教育長伊波勝雄さん 新資料加味、遺徳継承に焦点 野國總管の事跡をまとめた新版「現代版甘藷考」を発行した伊波勝雄さん=9日、嘉手納町屋良の自宅
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 【嘉手納】「おいもさんが日本人の命を救った!」―。11月16日の「いいイモの日」を前に「芋大主(うむうふぬし)」(イモの父)として知られる野國總管の事跡を長年研究している、嘉手納町の伊波勝雄さん(84)が「現代版甘藷(かんしょ)考」を発刊した。
 イモの伝来は琉球王国第二尚氏王統の1605年、中国に派遣された野國總管が栽培法を学び、苗を持ち帰ったのが端緒。当時の王府の高官・儀間真常の機転で救荒作物としてたちまち普及、沖縄の貧窮を救い、さらに鹿児島を経て全国に広まり、江戸時代には享保、天明の大飢饉(だいききん)などの“救世主”となった。
 野國總管は町内の旧野國村の出身。元教職者、元町教育長で歴史研究家の伊波さんは20年来の研究を生かし、2019年に「平成甘藷考-野國總管を中心に-」を発行。同書はたちまち反響を呼び、完売した。
 各方面からの再版の強い要望を受け、さらにこの間の新資料を加味した論考で新版をまとめた。イモ伝来の源流、歴史と普及、野國總管の国際性に富んだ進取の気風、遺徳の後世への継承に焦点を当てている。
 さらに中学校の社会の教科書に取り上げられたことがあること、県内外の研究者の功績も詳細に紹介し、児童生徒らが読みやすいようにルビが振られている。
 伊波さんは「たかがイモではない。總管は沖縄、全国の庶民の命を救った大恩人だ。特に若い人たちにはその深い歴史と文化を知ってほしい」と希望を語った。
 同書は通販アマゾンで、伊波さんが詠んだ「野國總管讃歌」なども盛り込んだ約500ページ余の電子版も購入できる。問い合わせは、電話090(1949)4557(伊波)。 (岸本健通信員)