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認知症との向き合い方「今を大切にいきること」 映画「オレンジ・ランプ」モデルの丹野さんが登壇 沖縄・浦添


認知症との向き合い方「今を大切にいきること」 映画「オレンジ・ランプ」モデルの丹野さんが登壇 沖縄・浦添 自身の体験を交え、認知症との向き合い方を語る丹野智文さん=20日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【浦添】うらそえ介護福祉士会(与那覇涼代表)が20日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホールで映画「オレンジ・ランプ」の上映会を開催した。同作は、実話を元に、若年性認知症と診断された男性と家族の姿を描く。上映前に、同作のモデルとなった丹野智文さん(50)が登壇し、自身の体験を基に、認知症患者と関わる人に気に掛けてほしいことや、認知症との向き合い方を語った。友人や家族、仕事仲間と日ごろから良好な関係を作る重要性を説き、「今を大切に生きることが、認知症になっても困らない環境を作る」と語った。

 宮城県の自動車ディーラーで働く丹野さんは、同僚の名前が思い出せなくなるなど自身の異変を感じたが、「ストレスが原因だろう」と、38歳のときに脳神経外科を受診した。検査を重ね、39歳になったとき若年性認知症と診断された。

 「『なんで俺が』と、1年半毎晩泣いてばかり。1人になると勝手に涙が出た。たまたま、笑顔で優しい認知症当事者に出会い『この人みたいに生きたい』と前向きになれた」と当時を振り返った。

 症状を進行させたくないという思いから、家族がココナッツオイルなどの健康食品を食べるよう次々と勧めてきたことに触れ、「このときが一番体調が悪かった」と観客を笑わせた。現在の元気の秘けつを「自分で決めて、自分で行動する環境があること」とし、デイサービスの利用に際しても利用の有無を決める段階から、当事者の意思を尊重する大切さを語った。

 デイサービスでのレクリエーションが、塗り絵など画一的なものになりがちな現状に触れ、「自分が認知症になったらどうしたいかを考えてほしい。携帯電話を持ってはいけないデイサービスもいまだにある。携帯が手元にないと不安だ。これからのデイサービスにはWi-Fiもセットで必要だ」と観客を笑わせた。

 今も診断前と同じ職場で働く丹野さんは、社長から「お前が笑顔で働き続けることで、他の社員が病気になっても安心して働けると思える」と応援されたエピソードを紹介。実際に、社員同士で家族の「認知症」の話題が出たり、重い病と闘う別の社員も社に戻ってきたり、病気に対する職場の風通しも良くなったという。

 丹野さんは「認知症は予防ができないため、備えることが大事だ」と指摘。脳の一部としてスマートフォンの活用を勧めた。最後は「ここにいる全員が、安心して認知症になれる県にしないといけない。それが、子どもたちにも障がい者にも優しい社会だ」と力強く締めくくった。 

(藤村謙吾)