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帰還困難区域 再会喜ぶ 富岡町の板倉さん 沖縄市の喜納さん 体験学習で6年ぶり


帰還困難区域 再会喜ぶ 富岡町の板倉さん 沖縄市の喜納さん 体験学習で6年ぶり (左から)板倉正雄さん、坂本雅彦さん、喜納京子さん=4月19日、福島県双葉郡富岡町字夜の森、板倉さんの自宅前
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 【福島・沖縄】福島第1原子力発電所の10キロ圏内の帰還困難区域を巡る体験学習「Fスタディーツアー」で、沖縄から参加した喜納京子さん(64)=沖縄市=が4月19日、現地の板倉正雄さん(95)=同県双葉郡富岡町=と6年ぶりの再会を果たした。
 喜納さんは2018年11月に同ツアーに参加。一部避難指示は解除されていたものの住人のいない当時の富岡町で、1人で歩いていた板倉さんに声をかけたという。板倉さんは17年6月に認知症を患う妻の光子さん(92)と、故郷で最期を迎えると決断し富岡町に戻っていた。
 喜納さんは「住んでいる人もほとんどいない場所で、認知症の奥さまのお薬を取りに病院に行くほか、スーパーでの買い物のために90歳(当時)で車の免許更新をしたと話を聞き、悲しい現実にやるせなさを感じた」と振り返り、「再会することができて心からうれしく、感動する」と述べた。同時に「これからはどうなるのかなと考えるだけで心が締め付けられる思いだ」と複雑な心境を吐露した。
 ツアーで前回に続き案内したガイドの坂本雅彦さん(50)=いわき市=は「避難指示が解除されてすぐに戻って来られた方とお話できたとき、現実的な厳しさの中で暮らす覚悟と故郷への思いを忘れることがなかった。6年ぶりにお会いできて、元気でいる姿を拝見し涙が出そうだった」と述べた。
 坂本さんは「この再会で強く生きる希望や勇気をもらうことができた。自分もできる限り現地の状況を伝えていきたい」と決意を新たにしていた。 (喜納高宏通信員)