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歯科医親子 移住地支える 玉城尚子さん、ジュリさん


歯科医親子 移住地支える 玉城尚子さん、ジュリさん ボリビアで歯科治療にあたる玉城尚子さん(左)とジュリさん(右)
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 サンタクルス市とオキナワ移住地の大通りで、県系人やボリビア人の歯科治療をする歯科医の玉城ジョセフィーナ尚子さん(62)と娘のジュリさん(37)。尚子さんが1993年に同市に歯科診療所を開業して今年で31年になる。オキナワ移住地の診療所は10年を迎えた。
 オキナワ移住地で日本語が通じる唯一の診療所は、患者の半数が県系人の患者だ。毎週水曜日と土曜日に、虫歯治療、歯列矯正、審美歯科を行う。他の日はサンタクルス市の診療所で患者の治療にあたっている。
 尚子さんは、戦後に沖縄からボリビアに移り住んだ、高嶺村(現糸満市)出身の玉城輝俊さん(86)と正子さん=享年58=の次女として、1962年にボリビアのオキナワ移住地で生まれた。モンテーロにある高校へ進学後、友人に誘われ、歯科学を学びにブラジルの大学に留学した。
 ブラジル国立大学セアラ総合大学歯科学科を卒業後、友人とブラジルで開業。その後、ボリビアに戻り、国際協力機構(JICA)の移住者子弟上級技術研究員として父母の故郷、日本へ。慶応義塾大学医学部などで研修を受けた。当初は言葉で苦労し、日本と南米の歯に対する考えや習慣の違いにとまどったという。
 歯科学と小児歯科を学び、帰国後、サンタクルス市で開業した。オキナワ移住地に当時は歯医者がなく、日本人のためになればと2014年に開設した。
 娘のジュリさんは母の背中を見て育った。自ら歯科学を希望し、大学生の時から母の手伝いをしてきた。05年に沖縄県費留学生として沖縄で日本語と沖縄文化を学び、13年はJICAの長期日系研修員として1年間日本へ。慶応義塾大学病院やデンタルクリニックで口腔(こうくう)外科など歯学に関する分野を経験して帰国した。
 「自信を持って患者の治療ができるまで、診療所を開けてから約2年かかった」と話すジュリさん。今では虫歯治療やホワイトニング、セラミック治療などを任されている。玉城さん親子の尽力は、移住地に「食べる喜び、笑う喜び」をもたらしている。 (安里三奈美通信員)