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激動生きた96歳「塗り絵」に魅せられて 色使い「直感」で鮮やかに「自分史」書き記すように 沖縄


激動生きた96歳「塗り絵」に魅せられて 色使い「直感」で鮮やかに「自分史」書き記すように 沖縄 幸地良徳さん(前列)、次女の我如古秋子さん(左)と長男の幸地良信さん(後列)=5月30日、うるま市の具志川厚生園
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 【うるま】96歳で今年、カジマヤーを祝う幸地良徳さん(うるま市平良川出身)が「塗り絵」に魅せられ、情熱を注いでいる。下絵から得る「直感」から色使いの発想が浮かぶという。没頭する姿は、激動の時代を生き抜いた「自分史という証し」を書き記すかのようだ。

 幸地さんはうるま市天願の具志川厚生園(福地政幸園長)で暮らしており、心地よい日差しが差し込むロビーの一角に「アトリエ」を構える。3年間で仕上げた作品群は回廊型の園内に飾られ、美術館のように映える。

 幸地さんは生まれつき右足が不自由だが、持ち前の「負けん気」で高跳びの具志川村(当時)代表選手となった。「太鼓の名人」としても活躍して地域に貢献した。

 「沖縄でトレーラーの運転手1号だった」と語る幸地さんは、材木店を営み、米軍基地などから木材を仕入れては県内各地に届け、沖縄の戦後復興期に奔走した。二男五女を育てた。

 塗り絵は長寿の秘訣(ひけつ)だ。当初は淡い単色だった画風も、日々の「リハビリ」の効果を発揮。手の力強さも増し、より色濃く鮮明となり「想像を絶する色使い」と、周囲に言われるようになった。使用する色鉛筆も数センチの短さで、使えなくなるまで大切に使う。

 「昔から暇を持て余すことができない性格」と娘の我如古秋子さん。幸地さんは「多くの方々に塗り絵を見てほしい。欲はない。これからもただ、書き続けるだけです」と熱く語った。

 (池辺賢児通信員)