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「感謝」など胸に刻んで活動 国境なき医師団・滝上さん、白保中で講演 紛争地の医療支援伝える


「感謝」など胸に刻んで活動 国境なき医師団・滝上さん、白保中で講演 紛争地の医療支援伝える 世界の紛争地などで見てきたことについて話す滝上隆一さん=19日、石垣市の白保中学校体育館
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【石垣】白保中学校(宮良篤校長)は19日、慰霊の日を前に、世界平和について考える平和集会を同校体育館で実施した。全校生徒約55人が参加した。県立八重山病院外科医で、国境なき医師団の滝上(たきがみ)隆一さんが中東などの紛争地で見てきた現状や、困っている人に「手を差し伸べる」など、自身が大切にしている四つのことを伝えた。
 イエメンやイラクなど主に中東に赴任してきた滝上さん。自身のいる病院から100メートルほど離れた場所に爆弾が投下されたことがあった。日本ではほとんどない、体内から銃弾を取り出す手術も施してきた。
 日本に比べ医療機器などが不足している厳しい環境でも「現地に行ったら現地の人と必ず活動する」と決めている。理由について「自分たちがいなくなった後に、現地の人が自分たちでできるようにするため」と説明した。
 両足が吹き飛ばされた子どもの写真(一部加工)などを見せて、紛争地では「逃げる判断が大人より遅れる子どもの被害が多い」と伝えた。亡くなる人も大勢いるが、治療で回復したり、命の誕生の場に立ち会えたりすることが、厳しい状況で踏ん張れる「原動力」になっていると説明した。
 イラクで通訳の女性から手作りの帽子をプレゼントされたことを振り返り、戦地や紛争地にも「人を思いやる気持ちがいっぱいある」と語った。
 自身が大切にしていることとして(1)困っている人に「手を差し伸べる」。そのためには「準備」が必要で、外科医なら得意分野以外の手術などの勉強をする(2)「自分で決める」。自分で決めればきついことがあっても「しょうがないと思える」(3)「みんなに伝える」(4)「感謝する」―の四つを挙げ、「胸に刻んで活動を続けている」とした。
 2年生の三島香奈子さん(13)は「どういう活動をしているかを聞いて勉強になった」と述べた。パレスチナやウクライナの惨状をニュースで見る度に胸を痛めているとして、「なぜ戦争をしないといけないのか理由がわからない」と世界の現状に思いを巡らせた。 (照屋大哲)